前回の企画ssと同じく、イメージss。(注・私的ですからね!)
前回と一緒で、柴田淳さん(嵐・二宮くん)の「夢」です。
イメージssと言うか、創作に活かした箇所が多々ありますです。
ま、まぁ、でも読んでも分からないと思います^^;
私的ですので、自己満足ということで流して頂けたら幸いです(汗)
前回の「心次第」 続編です。
遠い未来の空。
そして見上げると一番近くにあって、
でも遠い今の空。
―――ジワッ。
見上げる空が、滲む。
何でこんなに哀しいのか、泣きたい気持になるのか・・・
それは、あたしにも、
空の神サマにも分からない。
心次第 続編
線路を走る電車の音、踏み切りが鳴る音、家に帰る子供たちの笑い声。
昔から何一つ変わらない場所。
ココはいつも不思議と心穏やかにさせてくれた。
変わった事と言えば・・・・
ココから見ても分かるほどに、サクラの小屋に塗られたペンキが色褪せた事だろうか。
上出来とは言えないけど、三年前にアイツと作り上げた、あの時の鮮やかな色を思い出し
一人小さく笑ってアパートの敷地に足を踏み入れた。
ヤ 「よっ。久しぶり〜サクラv」
鎖に繋がれたサクラが、あたしの存在に気付き尻尾を振りながら飛び跳ねてくる。
すっかり一人前に成長したサクラのその力に押されそうになりがらも、
サクラの目線に合わせるようにしてしゃがみ込み、抱き寄せ、頭を力強く撫でてやる。
ヤ 「二週間、いや三週間振りかなー?」
最後に会ってから、丁度三週間。
そんなにも時間が流れたのか。
―確かあの日の夕焼けはヤケに目に沁みたんだっけ。
見上げると今日も空は赤くて。
サクラがあたしにつられるようにして、空を見上げる。
沈む赤は、今日の後悔と明日の希望をのせる。
何処かでそんな事を聞いたような、聞かないような・・。
ピク。
何かに気付いたサクラが、益々尻尾をふら付かせ、繋がれた鎖のまま飛び跳ねる。
この反応は。
―ハァ、いつまで経ってもアイツには勝てないな。まぁ当然だケド。
背を向けたままサクラに向けて小さく笑ったあとは、勢いよく立ち上がりって振り返る。
勿論、「お帰り」の言葉を忘れずに。
ヤ 「ヨウ、大工職人!」
内 「・・・・・あぁ。」
ヤ 「ん?何だよ?」
内 「居たのか」
ヤ 「い、居たのかって・・・!! お前なぁ〜恩師が会いに来てやってるっつーのに、もっと喜べよ!
第一若いくせに何て気の抜けた声出してんだ、あ〜あ〜。情けないねぇ〜ったく」
内 「うっせぇなー。疲れてるんだから仕方ねぇだろ」
ヤ 「疲れない仕事は世の中にはないのです・・・・・て、オイ、聞けよ!!」
気付けばサクラの前にしゃがみ込み、「よしよし」と優しい笑みで話しかけてるコイツ。
まるでソレは可愛い我が子に接する、父親のようで。
内 「・・ぷ」
ヤ 「な、何だよ」
内 「いや、別に」
ヤ 「だから何!?」
背を向けたまま何が可笑しいのか、一人クスクス笑う目の前の相手に
何がそんなに可笑しいんだと、早く言えとばかりにせかす、あたし。
そんな中、サクラは他人事のように目を細めては、気持よさそうに彼にされるがまま撫でられている。
内 「今日はまた元気だなぁと思って」
ヤ 「へ?」
内 「この前会った時とは全然違うじゃん、センセイv」
ヤ 「うっ」
内 「な〜サクラv」
ヤ 「ば、ばーか。センチメンタルと言ってくれ」
サクラを撫でる手を作業着のポケットに仕舞い、立ち上がったかと思うと
今度は一歩二歩とゆっくりと歩み寄り、目の前で止まる。
―いつの間に、こんなにも大きくなったんだろう。
生徒をやっていた時よりもガッチリしたそのたくましい体つき。
見下ろす瞳に分けが分からなく、自分もポカンと見上げた。
内 「似合わねぇー。」
ヤ 「う、ウルサイよ!・・・てかツッコムの遅いよ!」
・・たく。
こういうところは何も成長しねぇんだから。
あたしの反応に待ってましたとばかりに、ケラケラ子供のように笑う相手に対して
悔しくて、頬を膨らませ睨み上げる元担任。
どっちが子供なのかさえも分からなくなりそうで、気付くと、つられてあたしからも笑みが零れていた。
―よかった。その笑顔がこの夕焼けのように、今日も染まらなくて。
正直、この前会った日の、らしくない自分について深く聞かれなかった事に安堵した。
何故ならソレを問われても、自分でも説明がつかないのだから。
人間という生き物は、不思議な心の持ち主である。
説明がつかない気持や感情に襲われる事があるのだから。
ヤ 「じゃあ、そろそろ帰るよ」
内 「そうなの?」
ヤ 「うん、サクラの顔見れたしナ」
内 「またサクラかよ」
ヤ 「それ以外何がある?」
内 「たまには俺とか?」
ヤ 「・・・ハ?」
考える事数秒。
ニィと悪戯な笑顔を向ける元生徒に、からかわれた事を知る。
その瞬間、熱くなる頬。
こういう冗談は昔から苦手な事、知ってるくせに言うんだから・・・ちくしょう。
ヤ 「ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ! じゃ、じゃあナ!」
満面の笑みで片手をヒラヒラと振る相手に、益々頬がカーと熱くなる。
怒りで頬が赤いのか、照れて赤いのか。 それさえ分からなくなりそうだ。
ケド、この夕焼けの色が、まるで、あたしの見方をしてくれているようで。
背中に感じる視線に居心地が悪くて、ズンズンと歩を進める。
内 「あ!ヤンクミー」
ヤ 「え?」
内 「腹減らねぇ?」
その声に振り返れば、彼の左手には、チラシが一枚ヒラヒラと揺れている。
ヤ 「ぴ・・ピザ?」
内 「さっき職場で貰ったー。たまにはこんなのも良くね?明日休みだし」
ヤ 「お、お誘いか、それは?」
内 「一人で食っても上手くねぇしなー。それに、俺、今日給料日v」
ヤ 「そ、そうなのかーv」
内 「知っててココに来たかと思ったゼ」
ヤ 「ば、馬鹿!あ、あたしは、たかりやじゃねぇーよ!あいつ等と一緒にすんなっ」
聞けば何でも母親が昨日から一週間ほど海外旅行に行っているそうで。
「いい歳して」と言う彼だったけど、その表情はとても穏やかで優しい顔をしていた。
お風呂から上る彼に合わせるようにして、ピザが届けられた。
家ではこういう物を滅多に食べないあたしは、テーブルに広げられたピザに目を輝かせる。
そんなあたしに、呆れ笑いしながら、彼からは冷えた缶ビールが差し出された。
「乾杯」
コイツと酒を一緒に飲むのも、もう珍しい事ではなくなった。
そりゃ、そうだ。
3年も経ったのだから。
流れる雲が待ってくれない事と同じこと。
ゆっくりと思えて、確実に流れている。
でも毎回他愛も無い近況報告や、職場の話しをコイツから聞くのが、あたしは好きだ。
そして、そん中、仕事の愚痴を言っても「辛い」などと弱音を一度も吐いた事のないコイツに
あたしは一人帰る時、胸が痛くなるほどに、いつもいつも感動しているんだ。
―目の前の元教え子を誇りに思うよ、本当に。
内 「な?お前聞いてんのかぁ?」
ヤ 「あ、ごめん、えっと・・・・」
一人の世界に入りそうな自分を寸前で止めたのは彼だった。
テヘっと苦笑しながら、「何の話しだった?」と、ポリポリと頭を掻くと、また呆れたように彼が笑う。
内 「だから、お前の理想な家って、どんな家?」
ヤ 「家か?うーん、そうだなーー・・・・まず・・・」
内 「うん」
ヤ 「お風呂が大っきくて、トイレは2個は希望、大きな庭には車も止めれて・・・
リビングが広くて、あっ、でも畳の部屋は無いといけねぇよな、日本人はサ、うんうん。
あとプールだろ、カラオケルームみたいなのも欲しいなぁ、バーカウンターなんてものもあってサ♪」
内 「ありえねぇくらい、奇妙な家・・」
ヤ 「ゆ、夢はでっかくだろっ、てか、お前が聞いたんだろーがっ」
気付けば11時前。
時計を気にしだしたあたしに「駅まで送りマス」と敬語で言ってまた笑う。
散歩用のサクラのピンクの綱を持って、上着を羽織ると、もう一枚の上着を掴みあたしに差し出す。
ヤ 「え?」
内 「夜は寒ィから」
ヤ 「あ、平気だよ」
内 「風邪引かれて、三週間もご無沙汰になったら、サクラが寂しがるからナ」
ヤ 「うっ」
―今まで何も聞かなかったくせに。
三週間もココに来る事が空いたのは、始めての事だったかもしれない。
あの日の夕暮れの後から、胸のモヤモヤが取れなくて、ココに来る足が止まっていた。
三週間振りに突然来たあたしを、コイツはどういう風に思い、どう受け止めてるんだろう。
変な関係だと思う。
今更なんだけど。
そう今更。
夜風がほろ酔いの身体には気持い。
サクラが先頭になって、あたし達を誘導する。
あたしがコイツと一緒の日は、夜の散歩のコースが駅の方から回るのだと、サクラは既に理解しているようだ。
そう思うと、益々サクラが愛しい。
人間でも動物でも、誰かに構われているという事は、素直に嬉しいことだと思うから。
ヤ 「今日はありがとな、ご馳走様」
内 「いえいえ、どういたしまして」
ヤ 「じゃ、電車来るから」
内 「オウ」
お互い手をヒラヒラとふって、あたしは改札を潜る。
内 「あ、ヤンクミー!」
でもソコでもまた呼び止めたのはアイツ。
内 「・・・・・俺サ」
ヤ 「ん?」
内 「ガキの頃、空飛びたいと思ったよ」
―ああ、そうか。そうだよ。
切なくなるのは、正直すぎる彼だから。
哀しくなるのは、彼がいつも真っ直ぐだから。
そう・・・
あたしは彼の気持を知っていたのかもしれない。
いつから?
分からない。
随分昔から知っていたような気がする。
遠い過去の昔の空。
遠い未来の空。
そして見上げると一番近くにあって、
でも遠い今の空。
あの日、見上げた空が、涙で滲んだ理由。
今ハッキリと分かった。
そう、それは・・まるで。
―彼とあたしを見ているようだったから。
気付くと一番近くに居て、
でも遠い、彼。
あたしは、彼の気持に答える事も
そして彼自身も、あたしにそれ以上、近付こうとは、
彼が生徒の頃から、絶対しないのだから。
呟いて、飲み込んで、悲しいけど・・・
これが今の二人の力。
NEXT
*ルージュのアイコンからどうぞ。