「内山ぁ。ちょっとちょっと」
連日降り注いだ雨が上がったばかりの、水たまりだらけの公園。
梅雨の晴れ間にのぞく太陽が眩しくてたまらない。
そしてその光の中にいるのは
俺の名を呼ぶ愛しいアイツの姿・・・。
梅雨晴れの日の出来事
3ヶ月前・・・。
俺は決して手にするはずがないと諦めていた、かけがえのないものを手に入れることが出来た。
それが今では、俺にとって無くてはならない存在となったオンナ・・・山口久美子。
お互い、忙しい時間の合間を縫って出来る限り会うようにしている。
今日はそんな貴重な日曜日。
しばらく続いていた雨がようやく上がったので、近くの公園に散歩に来ているのだが・・・。
内 「何だよ?」
ヤ 「イヤ、そこに何かいるんだよ」
内 「ハッ?何か?・・・何それ」
ヤ 「分かんねぇからおまえを呼んだんだろっ!ホラ手伝え」
内 「ったく。・・・何なんだよ」
・・・とか何とか言っているが、彼女の頼みは断れない自分を痛いほどに知っている。
惚れた弱みとは、きっとこういう事を言うのだろう・・・。
彼女が指差す植え込みの奥を見ると、確かにソコには微かに動く黒い物体。
濡れた地面と木の葉を気にしつつ、正体を確かめるべく更に奥を覗き込んだ。
・・・いた。
子ネコだ。
内 「小っちぇ〜」
ヤ 「な、何がだよ?」
内 「・・・ネコ。ホラ、こっから見てみろよ」
ヤ 「えっ、ほんとか?どこ・・・」
俺より頭ひとつ小さい彼女を、子ネコの見やすい場所へと優しく押し出す。
子供のように目をキラキラと輝かせて指さす方向を覗き込む彼女。
必死で背伸びをする、そんな彼女の長い髪が微かに鼻先に触れ、昔から変わらない、大好きな優しい香りがした。
(こんな小せぇ事にドキドキしてるなんて・・・知らねぇわなぁ)
子ネコは先ほどまで降っていた雨にビッショリと濡れて、こちらを見ながら小さく震えている。
元は白だったであろうその身体もすっかり汚れて、灰色の毛を持つネコにしか見えない。
震える瞳の奥で俺達を観察するかのような、その頼りなさそうな表情は、何だかまるで
少し前までの俺のようにも感じた。
内 「・・・捕まえようぜ。このままじゃ可哀想だしな」
ヤ 「さすが内山ーー!!お前ならきっとそういうと信じてた!犬だけじゃなくてネコも好きなんだなv」
精一杯の背伸びで、俺の髪にクシャッと指を絡ませる・・・
そんな変わらぬ彼女の癖。
(・・・何気に好きなんだよなぁコレ。・・・・・・・・・あ。やべぇ。)
緩んだ顔に気付き慌てて引き締める。
慌てても彼女自身が気付くことはないのだが・・・。
彼女と二手に分かれて、両側からそっと子ネコに近づくことにした・・・が。
そんな簡単に捕まってくれる訳もなく・・・。
あと少しで届くという俺の手をひっかいて、あっという間に子ネコは別の茂みに隠れてしまった。
内 「痛ってぇ〜」
ヤ 「だ、大丈夫か?」
内 「大丈夫、ただのかすり傷だし。それよりヤンクミ、あっち回れっ」
必死で逃げ回る子ネコをどうしても放っておけず、
俺と彼女は公園の植え込みを彼方此方移動しながら追いかけたが、
決して捕まえることは出来なかった。
ヤ 「はぁ〜〜っ。疲れたぁ」
力を失くしたようにガックリとベンチに座り込む彼女。
小さく溜息を吐いて、自分もそんな彼女の隣に腰を下ろす。
内 「かえって可哀想なことしちまったかな〜。余計に脅えてるぜ、きっと」
ヤ 「・・・そうだなぁ」
内 「・・・で。どうすんだよ?ほっとけねぇだろ?」
ヤ 「当たり前だ!あんなに可愛い顔を見たのに今更ほっとけねぇよっ!う〜!お前も案外薄情なヤツだなぁ」
内 「ココまで探し回って薄情呼ばわりされるとは思ってもみなかったぜ・・・」
ヤ 「・・・うっ。で、でもどうしても捕まえて、家で飼いたいんだけど?」
内 「もうその気なのかよ!?」
ヤ 「だってぇ・・・」
相変らずの呆れも似た気持ちを覚える彼女の発言だったけど・・・・
・・・・出たのはまた溜息。
子供のように口をとがらせてスネる、そんな表情も可愛くてたまらない。
(・・・俺も相当やられてるよなぁ・・・)
ただ何となくそのまま座っている二人。
まぶしかった太陽も、傾いて少し日差しが柔らかくなっている。
(こういうの・・・なんか幸せカモ・・・)
何気ない2人の日常の中にある小さな幸せを見つけては、悠長に浸っていたその時・・・。
・・・!!!?
不意に、温かくてザラッとした感触を、先ほど子ネコにひっかかれた手の甲に感じた。
内 「おっ、おい、ヤンクミっ。ゆっくりこっち覗いみろよ。静かにだぞ!」
ヤ 「・・・ん?なんだ?・・・・・・あ」
ベンチの上に投げ出された俺の手のすぐ側に、ちょこんと座り込む小さな姿。
今日一日探し回ったその小さな犯人は、悪びれることもなく自分から姿を現したのだ。
そして、赤く線の入った俺の手の傷を、もう一度ぺロリとなめる。
ソーッともう片方の手を子ネコの方に回し・・・・・ゆっくりと抱き上げた。
今までの苦労は何だったのかと、真剣に考えてしまうほど
子ネコは逃げも暴れもしなかった。
ヤ 「コイツ・・・可愛いじゃんv」
内 「・・・・・・」
ヤ 「さっきひっかいたこと謝りに来たんだよ、きっと」
彼女が言うと何故こうも説得力があるのだろう。
普通では零せないそんな言葉が、サラリと彼女の口から零れた事に驚き、そして感心もした。
・・・けど、実はガラにもなく同じ事を感じていた事は、俺一人の内緒にしよう。
彼女に気付かれないように小さく笑って、
俺は改めて子ネコを優しく手のひらに納めた。
・・・・・やっぱりソイツは、自分に似通うものを感じた。
2人並んで歩く帰り道。
チラリと横目で見れば、子ネコを腕の中にしっかりと抱きしめ、優しい微笑みで見下ろす彼女の横顔。
その横顔を見ていると、心底穏やかで優しい気持になれるから不思議だ。
彼女を見上げる子ネコが小さな声でミャァと一つ鳴いた。
内 「どうすんの?そのネコ」
ヤ 「決まってるだろ。うちで飼うんだよ。もう名前も決めてあるんだv」
内 「なんて名前だよ?」
ヤ 「『ハル』。なんかハルヒコに似てるからさ」
内「ふ〜ん。・・・ん?」
ヤ 「・・・///」
内 「今俺のことハルヒコって言った?」
ヤ 「気づいた?・・・聞くなよ。恥ずかしい」
内 「気づくよっ!・・・何だよクミコ!」
ヤ 「なっ・・・///。」
内 「ふっ。あははは。」
ヤ 「ふふふ。」
夕焼けが真っ赤に染まった俺達の顔を隠してくれた。
季節はもうすぐ夏。
俺とクミコにはどんな夏が訪れるのだろう。
これから巡り来る全ての季節を、コイツと一緒に過ごしたい。
目に沁みるほどに眩しい夕日に、改めてそんな強い決意と熱い想いが生まれた・・・。
それは梅雨の晴れ間に覗いた太陽が眩しいある日の出来事。
END
◆有希の親友!同士!内クミ病重症患者様でもある、ユウコ様から内クミssですー!!
◎ユウコ様からのコメント
ヤンクミにベタ惚れのウッチーを書きたかった・・・というだけで書き始めたお話しです。
設定的には「春風の中に見つけた恋」の続編になります。
私みたいな初心者がpurelyの初企画に参加させていただいて、
皆様のお荷物にならないか本当に心配なのですが
有希ちゃんに、いろいろアドバイスをもらいながらやってみました。よろしくおねがいします。
◎有希乱入長コメント
一本取られた〜〜〜!!!(ぇ?)
こんちくしょう!うっちー最高に格好良いよーーーーーー!!!!←病気なもので勘弁を。
初心者でこの素敵作品よ…どうなのよコレ…私怒るよ?(何故に)
もう、何て優しくて温かいストーリなんでしょう!(感涙)
内クミ魂がひしひし文の中から感じます>< 今頃内クミファンの皆様は、じたばたしてるねぇ(私はそうです)自爆。
初めて読ませて頂いた時、「春風の中に見つけた恋」の続編だとマッハで察知しましたよ☆
お荷物だなんてとんでもない!コレがお荷物なら私いくらでも両手満タン持ちますっっ!!
そして出ましたよ奥さん!「ハル」「ハルヒコ」呼びーーー!!あ〜最高v
あ〜!内クミ万歳!!あ〜!企画に万歳だよー!!←壊。
有希の心のオアシス、ユウコちゃんへv
この度は無理やり企画に参加させたと言っても過言ではない、この怖い場所に(何ィ)
こんなにも素敵な作品を届けて下さり本当に有難うございました!!
最近思うように書けない自分へ愛のムチを入れてくれたかのように、また有希っち一皮向けたかんじです(脱皮?)
いつもいつも元気が出るメールや、BBSへの書き込み、チャット、本当に救われてます><
これからも末永くpurelyと有希・・どうかお付き合いして下さいねー!!(しがみつきっ攻撃)
そして数少ない内クミ同士でも、これからも共に愛を注いでいきましょうvうふv
もう貴女様は、創作をやめられなくな〜る〜ぅ。←トリック?