リングに秘めた永遠
―あなたの傍に
番外編―
♪ピンポーン♪
チャイムとともに、ノックをする。
部屋の明かりは点いているから、久美子は居るはずだ。
そう思って待つこと5秒。
ガチャリとドアを開けて、輝くような笑顔で迎えてくれる、この瞬間がとても好きだ。
「お疲れ、ハル。」
「ただいま。」
別にこの部屋で一緒に暮しているわけではないが、いつもこう言いながら彼女の部屋に上がりこみ、
そして、自分より頭ひとつ小さな彼女を抱きこみ、額にキスを一つ落とす。
それは、長い間の想いをようやく受け入れたもらえたことの実感を得られる、
俺にとっては儀式のようなものだった。
「ハル、晩御飯は?もう食べたのか?」
「ああ、今日は先輩と食ってきた。」
今の時刻は9時。
普通ならとっくに食べ終えて、若い自分としては夜食が食べたくなる位の時間でもある。
けれども、久美子はいつもこんな風に聞いてくれるのだ。
たとえ10時、11時に此処へ訪ねてきたとしても・・・。
久美子の元生徒から、恋人へと立場を変えることが出来てから半年弱。
社会人として任される仕事も増えてきて、また先輩達との付き合いも大事なことだったから、
此処へもなかなか来られず、頻繁に会うことは儘ならない。
それは、例によって問題児ばかりのクラスを担任させられている久美子も同じだった。
今日此処へ訪ねてきたのも2週間ぶりぐらいなのだ。
だからという訳ではないだろうが、ここへ訪ねてきた時の俺は、例えどんなに疲れている時でも笑顔で居られる。
「なあ、久美子、なんかこの部屋今日は随分物が多くないか?」
久美子の肩越しに部屋の中に目をやった俺は、思ったままを口に出してみた。
「えへっ、ばれた?実は先週末に大江戸へ行って来たんだ。そろそろ夏物の服とかを持ってこなくちゃって思ってさ・・・。
でも、今まであった冬物の服は、まだそのままたんすに入ってるから、片付けられなくって・・・。
まあ忙しかったのもあるんだけど・・・。」
「普通、ばれるでしょ。ま、いいや。座るトコがないわけじゃないし。」
「ごめん・・・あ、ハル、シャワー浴びてきなよ。その間にちょっとは綺麗にしとくからさ。」
「おう、じゃそうするわ。」
そんなわけでシャワーを借りて、さっぱりとした気分でリビングに戻れば、
テーブルには冷えたビールが乗っけられていて・・・
俺はいつもの定位置に座り込んで、クローゼットの辺りでごそごそ動いている久美子をぼんやりと見ていた。
と、目の端に見慣れないものを見つけた。
目の前のテーブルの上、ビールの缶とおつまみの落花生に隠れるように乗っている。
「クミ、これ何だ?」
「ん?」
久美子は膝立ちで近づいてくると、俺の隣に座り込み、ビールの缶を開ける。
俺が指差しているのは、ちょっと古びた感じの・・・オルゴールか?
「あ、これ?母さんの形見なんだ。」
オルゴールの蓋を開け、ねじを巻く。
題名は知らないけれど聞き覚えのある曲で、オルゴール独特の優しい音色が流れ始めた。
中は宝石箱になっていて、指輪が二つほど見え、久美子がそれを手に取る。
「母さんはあんまりアクセサリーとか持っていなくてさ。
もちろんこれが全部って言うわけじゃないんだろうけど、とりあえず私の手元にあるのはこれだけで・・・
この前大江戸に帰ったときに、思いついて夏物と一緒に持ってきたんだ。」
そんな風に言いながら、指輪を手に取り眺めている。
だが、その指に嵌めようとはしなかった。
「そっか・・・人って亡くなっても、こんな風に物とか、思い出になって残された人の中に生きてるんだよな。
俺も父ちゃんの顔とか写真でしか分んないけど、なんとなく肩車してもらったこととか、
散歩に行って犬が怖くて、父ちゃんの後ろに隠れたこととか覚えてるしな・・・それ、大事にとっとけよ。」
オルゴールを大事そうに抱えて、見つめている久美子を引き寄せ、頬に一つキスを贈る。
俺は片親だけだけれど、久美子は両親を亡くしているから、
寂しかったことも、辛かったことも俺の倍は感じてきているだろう。
でも、教師であったときの彼女はそんなことはカケラも見せずに、自分達を信じ、守り抜いてくれた。
卒業してからも、たまに訪ねていく元教え子たちにも、決して弱音は吐かなかった。
それが、半年前、余程溜め込んでいたのか、その弱さの片鱗を俺に見せてからは、
こうして恋人と認めてくれた俺だけには、辛いことや、
腹のたったことの愚痴を打ち明けてくれ、寂 しい時は甘えてもくれる。
ただ守られるだけの立場だった俺には、それは大人として認められた証であり、
男として自信を貰えることでもあった。
けれどもふと思うことがある。
あの時・・・久美子が孤独感に押しつぶされそうになっていた時・・・
彼女を訪ねていったのが俺じゃなく他の奴だったら・・・
そうしたら今の、この幸福な俺は居ないのではないか・・・と。
あんな状態の久美子を見たら、俺じゃなくとも彼女の様子が変だと気付いた筈だ。
そんな考えが唐突に浮かんで、慌てて否定する。
もし・・とか、たら・・とかそんなことを今考えてどうするのだ。
久美子が現実に頼り、甘えてくれるのは自分なのだ。
いきなり訪ねてこようが、それが深夜になろうが、自分だけにその笑顔を見せてくれているのだ。
久美子の気持ちを信じていればいい、その笑顔を支えているのは自分だと自負してもいいのだ。
けれども、時折訪れる不安感に押しつぶされそうになることがある。
久美子が精神的に弱っていたところへ付け込むようなタイミングで、
自分の気持ちを吐き出した、そのことにひけ目を感じて、卑怯者になったような気さえしてきた。
そんな堂々巡りとなった思考を打ち消すように、頭を振る。
「なあ、ハル。なに一人百面相みたいなことしてんだ?
何か悩み事でもあるのか?此処・・・眉間に皺が寄ってるぞ。」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事してた。」
そんな風に誤魔化して、隣に座る久美子を見た。
さっきのオルゴールをいまだ抱えて、今度は中蓋を取って下の段に入っていたのだろうブローチを手に取り眺めている。
と、その底に違和感を感じて覗き込めば、どう見ても宝石の類とはいえない、白い角ばった封筒のような物が目に留まった。
「クミ、これなんだよ。」
不躾に自分で手を突っ込み取り出したそれ。
久美子が返事をするより早く、中身を確認した。
どうしてそんな行動に出たのか自分でも判らない。
頭の中で、『止めておけ』と言っているもう1人の自分を感じたが、止められなかった。
中から出てきたのは、手紙とリング、そして制服のボタン?
隣で久美子が息をのみ、慌てて取り返そうとしたが
「何だよ、見られて拙い物なのかよ。」
棘のある言い方で吐き捨て手紙を読む。
久美子へ
お前がこれを読む頃は、俺はきっと空の上だ。 未知の土地へ行って学ぶことを躊躇っていた俺に、行って来いと背中を押してくれたお前には感謝してる。 3年間サンキュ。お前のお蔭で高校生活もまんざらじゃなかった。 むしろ、楽しませてもらえたよ。 今まで言えなかったけど、しかもこんな形でしか伝えられないけど、俺はお前が好きだった。 友達としてじゃないぜ。あ、誤解しないでくれ。友達としてのお前も好きだ。 いや、俺が言いたいのは、その、女として、お前が好きなんだ。
ビックリしたか? ビックリしたろうな。
でも、みんなで馬鹿やって、騒いで、センコーに怒られて、 そんな高校生活を失うのが怖かったから、今まで何も言わずにきたんだ。 お前のことだから、俺の気持ちを知ったら今まで通りには俺と接してくれないだろうと思ったから。
俺、こんな風に手紙なんて書くの苦手だから、用件だけ簡潔に書くよ。 このボタンは制服のだ。いわゆる第二ボタンっていう奴だ。いくら鈍いお前でも分るだろう? それとリングは俺がずっと制服の胸ポケットに持ってた奴だ。 このリングに自分の想いをずっと込めてた。 お前に告白したくなる度にこれに願を掛けるように、握りこんでたリングだ。 だからこのボタンとリングは俺の想いをずっと聞いてた。
そんなわけで、今これをお前に託していく。俺の気持ちを受取ってくれ。 いつか、ちゃんとした大人になって、お前より喧嘩も心も強い男になったら、会いに来るよ。 その時はこの手紙の返事を聞かせてくれ。
じゃ、行って来る。 一也 |
「こいつ・・一也って誰だよ?お前の何?」
自分でも驚くほど、冷たくて棘のある声だと思った。
言いながらも、久美子の説明を聞きたくないと、心の中で拒否する気持ちも湧いてくる。
手紙を持つ手から体温が急速になくなっていくのを感じた。
「うーんと、これはだなぁ・・・青春の1ページって言う奴?ってか、この一也って言うのは私の同級生なんだ。
1年のときからの腐れ縁で、3年間同じクラスだったんだ。結構仲が良くてさ、さっぱりしたいい奴なんだけど、
弱いくせにいっつも私の前に出るから、一番に殴られてさ・・・卒業と同時に海外に赴任してる両親のところへ行って、
あっちの大学へ入ったんだ。空港まで見送りに行ったんだけど・・・搭乗口を通過する直前にこれを渡されたんだ。」
説明しながらも、リングを取り上げ指に嵌めてみたりなんかしている。
おまけに嬉しそうに頬なんか染めやがって・・・。
俺が纏う冷たい空気には気付いてもいないようだ。
それに、俺の中に芽生えた嫌な感情にも・・・。
顔も知らない一也という男が、その指輪を介して久美子を抱いているような、そんな錯覚さえ起こしそうだ。
「一也ってばこの指輪をいったいどの指に嵌めてたんだろう。結構太いよな・・・私にはゆるゆるだ。
えへへ、なんか懐かしいな。それにこんなものを見たら会いたくなっちゃったよ。今頃どこにいるんだろ・・・?」
「なに、久美子って呼ばせてんの?一也って、名前で呼んじゃったりしてんのかよ。
それに、なに、クミはこいつに会いたいの・・・?大人になった俺の女になれ、なんて言われたいのかよ!
そいでもってそいつに抱かれたいのか、こんな風に?」
言うが早いか久美子をその場にねじ伏せる。
いつもの甘さも優しさも微塵もなく、ただ久美子の身体を求めるだけの行為。
「な、ちょっと・・ハル・・なに・・・ん・・うぅ・・・ん」
有無を言わせず唇を貪り、舌をねじ込む。
俺を否定する言葉が出てくるのが怖くて、離れてはやらない。
着ているTシャツの裾を捲り上げ、柔らかな白い素肌を嬲る。
空いている手で、久美子の手を拘束して、頭の上でまとめた時、彼女の指に嵌められたままの指輪に気付いた。
後はもう久美子の身体に溺れることだけに没頭する。
そうすることで彼女の思考までも支配できるかのように。
初めて身体を繋いだ時、その行為が久美子にとっては初めてのものであったことに、
身体が震えるほどの感動と嬉しさを覚えた。
ぎこちないながらも、俺に甘えるようにしがみついてくるその腕が愛しかった。
久美子の全てが俺を幸福にした。
なのに今の俺はいったい何をしている?
こんな独りよがりなやり方で、拒絶されないのをいいことに、貪るように久美子の身体を求めるなんて・・・。
もう何年も会ってもいないだろう男に嫉妬して、思いやりも優しさもないような性急さで久美子と身体を繋ごうとしている。
醜い、子供のような独占欲に嫉妬心・・・自分で解かっていながらも止められない、大人の身体。
我に返ったのは、久美子の辛そうな顔と、その目じりに涙の跡を見たときだ。
そこで初めて、今、自分のした行為がどんなに久美子を傷つけたのかに気付いたのだ。
なのに身体を離した俺の頬に、久美子は逆に気遣うようにそっと掌をあて
「ハル、気が済んだのか?何か悩み事でもあるんなら、話してくれないか?」
そんな風に言ってくれるから
「クミ・・・ごめん。」
それだけ言って逃げるように部屋を出てきた。
彼女を苦しめ、傷つけた自分が許せなかった。
なんてざまだ。
久美子を守り、支えてやりたいと思っていたはずなのに・・・
彼女の生徒だった時からずっと、守られる立場から守る側へと、立場を変えたいと願ってきた・・・
それなのに今は自分が久美子を傷つけた。
いつの間にか降り出した、土砂降りの雨の中に駆け出して、必死に走る。
何処へ・・・?
俺はどこへ行きたい・・・?
自分の醜い嫉妬心、子供のような独占欲、そんなものに負けて彼女を傷つけた馬鹿な行為。
全てを洗い流してしまえたら・・・いっそのこと自分ごと消えてしまいたいほど、後悔していた。
自己嫌悪に吐きそうだ。
容赦なく降りかかる雨に打たれながら、馬鹿みたいに走っていた。
息が苦しくなって止まった所は、自分のアパートのすぐ近く。
結局俺は自分の部屋へ逃げ込もうとしていたんだと気付く。
我ながら情けなくて、笑える。
そして、自嘲しながらも部屋へ入ろうとして固まった。
鍵が・・・ない。
久美子の部屋でシャワーを浴び、洗い替えのTシャツとジーンズに着替えていたから、
そのまま飛び出してきたから・・・テーブルの上に鍵も、携帯も財布も全部置いたままだ。
(はぁー、俺って馬鹿。ホント、どうしようもなく馬鹿。)
けれども、いくら馬鹿でも、情けなくても、このままじゃどうしようもないことも分っていて・・・。
(久美子ところに戻るしかないか・・・。)
そう思って、再び雨の中を戻った。
彼女の部屋の前に着いても、チャイムを押すことも、ノックをすることも出来ない。
身体から落ちる雨の雫が、足元を濡らしてゆく。
殴られるかな・・呆れて無視されるかも・・それとも、ドアさえ開けてもらえないかも・・
そんな風に考えて、もうどうしようもないほど自分に呆れ返っていた。
ドアの前に立ったまま、躊躇いながらたっぷり15分はたった頃・・・
夏が近いとはいえ、びしょ濡れの身体ではやはり寒くて、辛くて・・・思い切ってチャイムを鳴らす。
予想に反して直ぐにドアが開く。
と同時に、胸に飛び込んできた暖かな温もり。
精一杯に背伸びをして、俺の首に手を回してくれている。
(バーカ、お前も濡れちまうだろう・・・。)
そんな何も関係ないことを考えながら、力一杯抱き返す。
俺は久美子を失わずに済んだのだろうか。
「ハルのバカ。何処へ行ってたんだよ?いきなり飛び出して行ったと思ったら・・・
傘も差してなかったんだろ、びしょ濡れじゃないか。」
そう言いつつ身体を離し、慌ててタオルを取ってきて渡してくれた。
「クミ・・・俺さ・・・」
「話は後。もう一回シャワー浴びてきな。こんなに冷たい身体で・・・ちゃんと暖めないと風邪引くじゃんか。」
素直にその言葉に従う。
背を向けたままで言われたそのセリフと様子から、彼女が怒っていることは理解できた。
当然だよな、追い返されなかっただけましか・・・。
そう思いながらも、さっきこの部屋に帰ってきたときの久美子の態度を思い出して、
ふと自分に都合のいい考えが頭をもたげる。
彼女の心の内が読めない。
けれども、とにかく謝るしかない、そう思って風呂場を出た。
久美子は、熱いコーヒーにミルクをたっぷり入れて、用意してくれていた。
いつもの俺の定位置もちゃんと空いている。
ただ久美子はテーブルから離れ、クローゼットに凭れて膝を抱えていた。
「クミ、さっきのことだけど・・・俺・・・ごめん。お前の気持ちも考えずに、いきなりあんなことして・・・悪かった。」
「・・・・・・・・」
立ったままで声を掛けたのがいけなかったのか、返事はない。
だが、ふと久美子の着ているものに違和感を感じて近づく。
さっきと同じTシャツ?なんか色も濃くないか?
「バカ。お前濡れたまんまじゃねぇか・・なんで着替えねぇんだよ。」
「バカって言うなよ。ハルのほうこそバカじゃないか。バカ・・・バーカ。」
そんな風に言う久美子は涙声みたいだった。
俺は改めて、自分が彼女を深く傷つけたんだと気付く。
「分った、悪かったよ。バカなのは俺だ。だから、ちゃんと着替えろよ。お前の方こそ風邪引いちまうだろ?」
さっき久美子が片付けていた荷物から、適当なものを取り出して、久美子に渡す。
素直に受取ったものの着替える気配はなくて、俺は暫く考えてから彼女の横に座り込んだ。
そうして自分が肩に掛けていたバスタオルを久美子に羽織らせ、その上からしっかり肩を抱く。
謝るにしても、話をするにしても、いつもの位置関係でいたほうが落ち着ける、そんな言い訳を自分の中でしていた。
「クミ、ごめんな。さっきのこと・・・俺、自分勝手にお前のこと抱いて、逃げて・・・。
なんか自分で自分が止められなかったんだ。ホントに・・・ごめん。」
謝るしか出来ない最悪な俺、自己嫌悪でいっぱいだった。
だけどおとなしく肩を抱かれている久美子の態度に甘えて、腕の力は緩めなかった。
失いたくない、手放すことなんて考えられない、俺の幸せそのもの。
繋ぎとめておくためなら、俺はどんな嘘も言い訳もするだろう。
「なあ、ハル。なんかあったんなら言ってくれ。私・・・よく分かんないんだ。
もしかしたら、ハルに嫌な思いさせたのか?いつか・・・みたいに・・・?」
「いや・・・そうじゃなくて・・・」
一所懸命言い訳を考えていた俺には、久美子の言葉は渡りに船のような気がした。
このまま卑怯者の仮面を被って、なし崩しにしてしまおうか・・・
そんな考えが頭を掠めたが、即座に否定する。
久美子に対して卑怯なことだけは絶対にしたくない。
卑怯なことは彼女が何よりも嫌いなことだ。
それをちゃんと分かっていて卑怯者に成り下がったら、この先きっと、ずっと後悔する。
「クミ、俺さ・・・、多分懐の小さい奴なんだと思う。大人になりきれてないっつうか・・・その・・つまり・・・」
「ハル?」
「俺、さっきの一也って奴に嫉妬したんだ。俺の知らない、お前の高校時代を知っていて、
そいでもって名前で呼び合うような仲で・・・指環とか第二ボタンとか渡したりなんかして・・・
お前、そいつに会いたいなんて言うし・・・。俺、そいつに叶わないような、クミを取られるようなそんな錯覚をしたんだ。
クミはなんも悪くないのに・・・なんか不安になって・・・。
俺・・・お前が自分のもんだって確認したくて、それであんなこと・・・ごめん、クミ。辛かったろ?」
「・・・・・」
久美子は無言で俺の腕から抜け出して、そうして前に回ると真正面から見つめてきた。
俺は目を合わせることが出来ずに、膝の上で拳を握り締めて久美子の言葉を待つ。
「ハル、私こんなだから、上手く言えないけど・・・ちゃんとハルのこと好きだぞ。
傍にいて欲しいと思うのも、こんな風に自分を曝け出して甘えたくなるのも、ハルに対してだけなんだ。
それに私・・・一度に複数の奴を好きになれるほど器用じゃないよ。それはお前が一番良く知ってるだろ?」
「クミ・・・?」
「私の気持ち、ちゃんと伝わってる?ハルじゃなきゃ駄目なんだ、傍にいて欲しいんだ。
勝手な思い込みで、私の前から居なくなんないでくれよ。」
「クミ・・・ごめん。俺、お前の傍に居ていいんだな。
ちゃんと愛されてるって、自信持ってていいんだな・・・ありがと、クミ。」
俺はやっと顔を上げ、久美子と目を合わせることが出来た。
瞳を潤ませながらも、優しく微笑んでくれる久美子を、力一杯抱きしめ、そして心からのキスを贈った。
互いを想いあってするその行為は、身体が震えるほどの幸福感と安らぎを俺にくれる。
失わなくて良かったと心底思ったのだった。
「あ、そうだ。クミ・・・これ返しとく。さっきの、一也って奴の指輪、ちゃんとしまっとけよ。
大事な青春時代の1ページなんだろ?でも・・・もう指に嵌めたりすんなよ。」
そう言って、取り上げていたリングを久美子に返した。
ただ黙ってそれを受取り、オルゴールの底にしまう久美子の手元を見ながら、ふとある考えが浮かんで・・・。
そんなことがあった5日後。
いつものように久美子の部屋を訪れた俺は、小さなケーキの箱を運んできた。
今日は久美子の誕生日。
一つ歳の差が開いてしまう日だけれど、彼女がこの世に生まれたことに感謝をする日でもある。
嬉しそうに瞳を輝かせる久美子を後ろから抱え込んで、俺はポケットからもう一つのプレゼントを取り出した。
「クミ、これはずっと嵌めてろよ。俺は何時でも、お前の傍にいる。忘れんなよ。」
久美子の左手をとり、そっと中指に嵌めたのは、シルバーのリング。
他の奴からの指輪なんか絶対に嵌めさせない。
そう決めた俺の心の象徴だった。
END
■夢百合様から内クミssですー!!!!
◎夢百合様からのコメント
内久美ファンの皆様、申し訳ありません。今回うっちーは思いっきりヘタレで、子供になってしまいました。
そして、姐さんも大人を目指して大失敗。こんなになるつもりじゃなかったんですが、どこで間違ったんだか・・・。
でも、事前に有希ちゃんに読んでもらった所、特に苦情がなかったのでほっとしています。
(内久美ファンの方の反応が一番怖くて、その最たるものが有希ちゃんですから)
今回は管理人の有希ちゃんのお祝い企画も兼ねてチャットで盛り上がったテーマだったのですが、
本当に苦しみました。書きなれないCPを選んだことも大きな間違いだったのかもしれないです。
けれども、愛情を込めて書かせていただきました。有希ちゃん、この度は結婚おめでとう。
タイトルにこめた「永遠」の通り、末永くお幸せに。
◎有希乱入コメント
へたれウッチー万歳!!!!!か、可愛いーーーvv
し・か・もv
ラブイチャ万歳じゃないですかーー!!!!!自分がラブイチャ書けないからもうホント感動です><v
「あなたの傍に」は初めての共同作品なんですよね〜凄く思い出深い作品ですv(蘇る美しき思い出)
二人で頑張って創作した作品だから、(私はアレンジだけですケド;;)番外編を読めるなんて感激です!
「ばれた?」「ばれるでしょ」の萌え台詞も有りの!& ハル、クミ呼びまで有りーの!!!・・・んもうもう、
大満足!!!てか、大感謝ですよーー!!!!
そして、子供なウッチーに対する久美子姐さんの大人な愛に泣けました。もう最高ですv
てか、ラストの一皮向けたウッチーに、トキメいちゃいました〜vv(どっきーん)←でた、内クミ病特有の発作
夢ちゃんへv
夢っちーーーー!!!!あーりーがーとーうー!!!(抱抱抱)感涙。
まさか企画で番外編を創作して頂けるなんてっっっ>< ホント嬉しいです!!!
夢ちゃんの文はいつも凄く丁寧で、有希っち大好きですv夢ちゃんの性格出てますよね@@くすっv
purelyの夢市長の存在は大きいですよ〜〜ホントいつも助けられています。もう、いつも感謝しております。
これで心置きなく、留守も出来るってもんですよ、ガハハハv・・痛っ!!←べシッ!殴。
いや、でも、まさか結婚してもサイト運営続けていくとは、実は思っていなかったですよ^^;(独身時代の趣味にと・・)
チャットで告白した日、夢ちゃんを始める皆様の反応が凄く嬉しかったです、ホント泣きそうになりましたよ(大感動)
てか、どんちゃん騒ぎ?(笑) そして日記でそれとなく告白・・・数えきれないメールの数に嬉しくて本気で泣きました><
しかも今回のテーマ、私なんぞのお祝いも兼ねて・・アワワ、何だか申し訳ないです。チャットーメンバー恐るべし(ぉぃぉぃ)笑
サイトを立ち上げてもうすぐ1年。この1年ホント色々あった年でした〜(しみじみ) 生活もガラリと変わったものねv
いつも溢れるほどのエールと愛を有難う!!これからもサイトも、オフの方でもどうか仲良くしてねv
へっへっへ、名古屋入り浸りになって、有希も夢ちゃんと民ちゃんのデートに割り込むんだぁv(笑)
この度も企画への参加有難うゴザイマシタv 創作ホントにお疲れさま〜〜!!
大難産の末にめでたく生まれた素敵ss、最高に嬉しかっですv 有難うゴザイマシタ〜!!><v