静かな火花








 ある日の放課後。

 ちょっといいものを手に入れて、ほくほく顔で土手ぞいを走っていると。

 前方にゆっくりと足を運びながら夕日に目をやる、幼馴染みの姿が見えた。





 

 「りゅ〜うっ♪」

 「・・・・・」

 「あ!そんな顔すんなよ!せっかくいいもの見してあげようと思ったのにさ〜」





 

 振り返れば迷惑そうな彼の顔を、逆に思いきり得意気な顔でのぞきこめば。



 

 「何」

 「え〜?どーしよっかなぁ〜」

 「・・・タケ。」





 

 お。なんだかさらに機嫌降下。

 でもにらみつけてもお前、全然怖くねーぞ。



 

 そう。

 竜も・・・それから隼人も、最近めっきり角が丸くなった気がする。

 あの誰かさんが来てから。

 お節介な先公、ヤマグチクミコが俺たちの担任になってから。



 

 「だーからそんな顔すんなって!しょーがないなぁ〜」





 

 そう言いながら学ランの内ポケットから取り出すのは一枚の写真。

 我らが3D担任のやんくみが満面の笑顔で写ってる写真。

 こないだみんなで撮った写真のフィルムに偶然入ってたんだって。

 誰が撮ったかわかんないんだけどさ、今日もらったんだ。



 

 ――――うらやましいだろ?





 

 そう言ったらまたキッと睨まれた。

 だから怖くないんだって。

 

 

 だってさ、竜は認めないかもしれないけど、顔がちょっと・・・欲しそうだよ?

 だから少しのいじわるを君に。



 

 「でも竜もほしいでしょ?」

 「別に・・・」

 「またまた〜。ホントはほしいくせに。」





 

 からかうように言うと歩き出そうとしていた彼の体がこちらを振りかえる。





 

 

 「ほしいって言ったらよこすのか?」





 

 口元にはなんだか人の悪い笑みを浮かべて。

 だからこちらも負けじと笑みを一つ。



 

 「まさか。竜も・・・たぶん隼人も、ほしいだろうな〜と思ってたんだけどさ。」





 

 これはあげないよ。

 だって俺もやんくみ大好きだもん☆





 

 続けて言うと彼の目は少し見開かれて、彼はすぐにこちらに背を向けて歩き出した。



 

 「おまえがそんなに余裕かましてられんのも今だけだぞ。」





 

 そんな言葉を言い残して。

 

 

 

 俺の後ろ、少し離れたところからつっちーと日向の声がする。

 まだ彼らには気づかれてはいけない。気づかせてはいけない。

 だから今のうちに彼にはこの宣言を。





 

 「竜!俺・・・ぜってー負けないよ。」



 

 振り返った幼馴染みの余裕そうな顔ににっと笑ってみせると、彼もまたふっと笑みを返した。



 

 この気持ち、譲ってたまるか。







 とある放課後、静かに散らされる恋の火花。

 

 

 

 

 

 END










 *****あとがき(という名の言い訳)*****

 初めてまともに書いた(はずの)黒版は、なんとヤンクミが出てこない!という・・・
 ありえない結果に終わってしまいました。笑
 ホントは隼人も出したかったんだけど、隼人入れると収集がつかない!(ぇ)
 ということでね・・・やめました。涙
 でも・・・楽しいね♪
 機会があればまた書きたいな〜と思いますvv

 

 

 

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