力の均衡

 誰かが一度でも手を抜けば

 そこから崩れてゆく緊張感

 愛という名の戦いの果てに・・・・・?

 

 

 

 不完全恋愛








 元々よくくだらない事でも競いあっていた二人だった。

 だから、今回ももちろんその延長線上で、

 たまたま自分がそのラインの上にのっかっていただけだと久美子は思っている。

 

 

 まあ、今までになく毛色のかわった女が、自分たちになびかず目の前にいるのだ。

 新しいオモチャでも見つけた気分だろう。

 しかもここは男子校・・・・。

 

 

 だからといって、何度も何度も目の前で繰り返されるセリフに、テレたり辟易しないわけではもちろんない。

 言われなれない気障なセリフや、過度に接触してくる体温に少しばかり引いてしまう自分もいる

 

 

 だいたい・・・

 

 「だいたい、アタシはお前らのセンコーなんだぞ?」

 

 

 今まで何度も言った言葉を、今日も久美子は疲れたように口にした。

 

 




 「そんなの関係ねえ」

 ボソリと呟く声と

 「むしろ美味しいカンケーじゃん?」

 お気楽なノリ



 

 久美子は大きく溜息をついた。





 

 今日も今日とて、黒銀学院1,2を争う荒くれ少年ふたりで、

 更に1,2を争うモテ男に朝から付きまとわれている久美子を、他の生徒達も慣れたのか笑いながらみている。

 少年たちの意見も結局久美子と一緒で、

 「また竜と隼人が競い合ってるよ〜」という程度の明るいノリだった。

 

 たまたま今回の争奪戦の対象が女で、教師で、担任だっただけで、

 今までにもふたりは小さな張り合い合戦を幾度となく繰り返してきたのだから。



 

 

 (ただ、今回は少し長いけど・・・・?)



 

 

 気がついたら両脇にくっついている二人の興味がすぐに他所に向くと想っていた久美子としても、

 なかなか飽きない二人に困りだしていた。


 

 

 「今回はどっちが勝つと思う?」

 「俺隼人に100円」

 「じゃあ竜に200円」


 

 

 無責任な会話は繰り返される。

 どちらにせよ、もう一ヶ月もすれば卒業なのだ。

 学校は楽しいに越した事はない。

 黒銀学院3年D組には今日も楽しそうな賭けの相談が響く。




 だが、一人だけその和から外れている少年もいる。

 昨日の昼休み、まとわりつく二人から逃れるように

 校庭の隅で弁当を広げていた久美子の横やってきたのは・・・


 

 


 「・・・武田」


 

 

 ガサリと揺れた木の葉にビクリと身を竦めた久美子だったが、

 少年の華奢な身体を認めてほっと息をつく。

 

 

 「屋上にいたら見えたからさ〜・・・なんか、お疲れ?」

 

 

 人なつこい笑顔を浮かべて隣に座り込んだ武田が久美子の広げた弁当の中身を覗き込む。

 

 「うまそ〜。あ、そのうずらの卵ちょうだい!」


 

 

 串に刺さったそれを手渡してやると、嬉しそうに口に放り込む子供らしい仕草・・・・

 久美子は今日何度目かの溜息を吐き出した。

 あいつらもこれっくらい子供っぽけりゃあ、アタシも赤くなったり青くなったりにないのに・・・。

 

 ため息をついた久美子を見ながら武田は面白そうに笑って口を動かせている。

 口元から赤いプラスチックの串が覗いて、なおの事子供っぽさに拍車がかかった。



 

 

 「なんか、うっとうしいかもしんないけどサ。・・・二人ともけっこうマジだから、嫌わないでね」


 

 

 一瞬止まった久美子だったが、意味を理解して小さく首を振った。



 

 

 「ああ、あいつらな。別に鬱陶しくはねえし。嫌いにもならないよ。

 まあ目の前にこんなナイスバディーな女教師がいるんだ、仕方ないさ。」



 

 言われなれない言葉の羅列は正直恥ずかしい・・・。



 

 

 『好●だ』・・・とか

 『付●き合ってくれ』・・・だとか

 『愛し●る』・・・とか

 『●きたい』・・・とか

 

 

 回想ですら伏字にしてうっすら頬を染めた久美子に、また武田が笑った。



 

 「ナイスバディーじゃないじゃん」



 

 ”疲れた”というよりは、”テレくさい”のだ。その辺は武田にも分かった。

 嫌がってはいないが戸惑っている・・・という所だろう。

 武田自身、毎日繰り返される隼人のキザなセリフと

 竜のストレートなアプローチは見ていて恥ずかしいものがあった。



 

 (竜ちゃんも隼っちもはずかしい〜〜〜〜〜!!)

 

 

 年端もゆかぬ頃呼んでいた名で頭の中悲鳴をあげる日々。

 子供の頃から知っている男友達が恋愛に勤しんでいる姿というのは

 思春期の少年には妙にテレくさかった。

 横で頬を染めている当事者には内心深く同情する。

 

 けれど

 

 「二人とも真剣だしさ。どっち選んでもお勧めだよ。幼馴染としては」

 

 「お勧めって・・・だいたいどっちも選ばないし!!

 それに真剣っちゃ真剣だけど、それってアタシにマジなわけじゃないと思うぞ?」

 

 

 最後に残ったプチトマトを口の中に放り込んだ久美子が、やっぱり少し赤い顔で否定する。

 

 「まあ、そう思われても仕方ないけど・・・でも、今回は違うかも?」

 

 

 武田は軽くそう言って笑ったが内心では真実そうだと思っている。

 冗談めかして付きまとう二人の態度も、火花を散らせてにらみ合った後に笑いあっている笑顔にも

 真剣にライバルとしてお互いを値踏みしている鋭い光が見え隠れしていた。

 

 

 今回は今までと違うぞ。

 ・・・それは当事者の二人と、武田だけがしっている真実・・・・。









 武田とそんな会話をした放課後。

 慣れ親しんだ教室で両脇を当の二人に挟まれた久美子は内心で冷や汗をかいていた。

 

 

 ・・・・昼に逃げたせいか、今日は追及の手が若干厳しい。




 

 「だからさ。選ぶとしたらどっち?どっちが好きなんだよ?」

 

 

 はなから自分たちのどちらかが選ばれると信じて疑わない隼人は

 焦る久美子の手を両手で握り締めた。

 

 

 「・・・俺、結構上手いぜ?」

 

 

 一体全体なにが上手いんだか知らないが、

 対抗するように竜も久美子の空いた腕を手の中に納める。



 

 「俺のがうまいっっつの!・・・天国行かせてやるからさ。俺を選ぶよな?」

 

 

 だから、何が上手くてどうして天国にいくんだよ???

 という久美子の内心のツッコミは目の前でにらみ合い火花を散らす二人には届かない。


 

 右手を竜に、左手を隼人に取られたままで久美子は

 無理と知りつつ後退しようと身をひいた。


 

 

 「いや・・・だからな。もちろんお前らの事は好きだけど、どっちがどっちとか、そんなのないから・・・・」

 

 「どっちも選べねぇってことか?」

 「ふたりとも好きなわけ?」

 「イヤ、だからな・・・そういう事じゃなくって・・・」

 
 

 不毛な会話は延々続く。




 「じゃあさ!3Pでもいいぜ。しょうがねえし、ここは妥協で」




 一瞬沈黙が落ちた。

 久美子の上にも、竜の上にも。

 

 一瞬でふたりを凍らせた隼人はといえば、しかたねぇなとばかりに眉をしかめていたが、

 ノリはあくまで軽く。

 

 「お茶でもしようか」というくらいのライトな感覚でいる。

 

 「・・・お前・・・さすがに俺も、お前の見たら萎えるぞ」

 

 

 竜は呟いて、久美子は完熟トマトのようにボンッっと赤くなった。



 

 「か〜わい〜〜〜〜っ」

 

 

 赤い顔を包むように手が添えられて、うろたえたままの久美子に顔が寄せられる。

 赤くしたのも非常識な言動で竜さえも無言にしたのも彼なのに、やたらに頭の切り替えが早く・・・

 というか本能に忠実で、すぐ目の前の衝動に素直に行動する。

 

 

 「テメ何しやがる!!」

 

 止めたのは竜であって、キスされそうになった久美子ではなかった。

 一種ショック状態の久美子は少しばかり反応がニブイ。



 

 さ・・・・さ、ささささ・・・・3・・・・・・P・・・???

 き、聞き間違いじゃなく、ホントに???

 それとも最近の子達の間では意味が違うのか?????





 頭の中はぐるぐるしている。

 目の前で竜と隼人の身体から巻き上がる剣呑な気もぐるぐるとぐろを巻いている。


 

 もし、武田が言った事が本当だったら、あと一ヶ月はこの状態が続く事になるのだ・・・・。

 自分の中で何かが根本的に覆りそうで少し怖い。

 

 

 そして

 

 両の手を掴まれたまま、久美子はまた大きく溜息をついた。


 

 ・・・・温もりが不快ではないから困るのも

 決して照れていても嫌ではないのも・・・事実。





 

 ―――――どちらも選ばない

 

 

 ―――――どちらも選べない





 ―――――その真実は?






 

 久美子にも分からなかった・・・・。






 END

 

 




 ふふ・・・楽しくってしかたありません!
 サンドしたい〜〜〜〜(←オイ)
 ちなみにこのお話はタケバージョンも書きますvv
 
           執事

 ふふふふふ、コチラも楽しくて仕方ありませーーん!!!←殴
 うきゃーー!!!久美子姐さん大変だぁぁぁvvv(喜ぶな)
 し・か・も・・・・クスクスv
 雪乃っちてば、武バージョンも書いて下さるとか><v
 さすが創作の神サマ!!!もう、雪乃じぃやってば、何て素敵なのぉぉ(惚れ惚れ)愛
 こーいう展開をストレートに小説に出来るアナタの筆力が羨ましい限りです><

 てか、雪乃っちよ・・・v
 
 かーなり、武にもハマッテルね(ニヤリ)笑
 武ーーーー!!!!可愛くて萌えだよ!!最高ー!!!
 いつでもどんとこーい!カモーンよーーぉぉv(準備万端)うへv

            息子


 

 

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