小話







フェンス








「え・・・あ、おい!」


自分の身長よりゆうに高いフェンスを
あっという間に乗り越えて、柵の外へ彼女は降り立つ。

屋上でこうしてサボっていれば、彼女が現れるんじゃないかと思った。
そこまでは予想通りだったのに。


「何やってんだ。危ねぇから戻れっ」

突飛な行動に驚かされるのはいつもこちらだ。
担任の彼女は、俺らのことを手がかかるだの何だのと言っているけれど。


「・・・こんな感じだよな」

「は?」

彼女は得意げに振り返って言った。


「おまえとあたし」

「…!」

風に吹かれて彼女の長い髪が翻る。
気持ち良さそうに空を見上げた。



何を意味して言ったのだろう。
金網越しの彼女の様子から、それは読み取れない。


檻に囚われたままの自分と、自由な彼女?
それとも、柵を乗り越えられない二人の関係?


特に深い意味のない彼女の発言に、また彼が振り回されているだけなのかもしれない。

それでもとても印象的だった。



自分は、この柵を越えたいのだろうか。
そうすれば、自由になれるのだろうか。

(この檻の中から)

その代償はなんだろう・・・。


でも、彼女のなびく髪を捕まえることもできない距離なら
壊してしまった方が良いかもしれない。

・・・何を引き換えにしたとしても。















2007.1.13



すみ

フェンスに色気を感じます。
もっと言うなら、ダイヤ柄のフェンスに絡む指にエロ気を感じます。(ワタシだけ?)
・・・ということで、ちょっとしたコバナシ・・・。

『彼』は誰でもOKな感じで書きましたが、一応黒銀寄りなイメージ。
ちょっと大人な山口センセと踏み込みきれない生徒、みたいな。