「じゃあ二人ともなんでその人なの?」 と、どうしても聞きたくなってしまったのは今日彼女がウチに来るからだ 進路面談というコトであと15分後には もうソコに座っているだろうその人 二人が口を揃えて 「色気がない」とか「口が悪い」とか「あんなのは女じゃない」とけなすから逆に気になった どこを好きになったのか・・・というか本気なの?って 二人は結構負けず嫌いなトコがあるから、だから張り合ってるだけじゃないの? 『 測り違えた心の奥行き 』 「いらっしゃい、やっぱり来たね」 「久しぶり。あぁ、仕返しに」 「うわっ!なんだよ、来んなよ〜!!」 顔が「嫌」を表している そういうトコは兄ちゃんの、矢吹隼人の「長所」であると、僕は思ってる そしてそれを簡単にかわす事のできる数少ない人物、兄ちゃんの親友・・悪友?小田切竜 仕方ないよ 兄ちゃんが一週間前の竜ちゃんの面談のときにわざわざ邪魔しに言ったのが悪い 良かった。やっぱりケーキ4つ買っといて正解だった こうして3人で、「ヤンクミ」を待つ事になった 「あ、・・・来たぜ」 ずっと窓の外を気にしてた竜ちゃんが先に気づいた 「うっわ、何アレ!?」 顔が・・・見えない 進路関係であろう資料で両腕が塞がり、その状態で手には積み上げられた本の山 本当に女? 重さに耐え切れず 足・・開いてるよ あれだけで何`あんだろ? あの状態でここまで来たの? ・・・確かにただ者じゃない 「お前が進路、まったく決めてねぇとか言うから」 「重・・そうだね」 まったく申しわけない 前に 「進路まだ決まってないのか?」 その時、親父が珍しくイイ事言ってた 「進路ってのは自分の好きな事とか興味のあるものの延長戦にあるもんだ。」と。 そしたらのんきに 「ヤバ、じゃあ俺将来 四代目じゃんv」 とか なんとかワケのわからない事を言っていたくらいだから本当に何も決めてないのだろう もしくは マジに悩みすぎてわからなくなってる? あの人の側にいられる道 か、あの人のための道?・・・まさかね、兄ちゃんがね 「「お前のせい」っつーか、俺のタメ?」 明らかに嬉そうな顔 とろけそうな顔しちゃって それを見て竜ちゃんは少し苦笑いだったけど 先生の方をもう一度見て 同じようにやさしく微笑んだ 「あいつさぁ、山口は あんな小さい体して俺のため・・まぁ他の誰のためにでもそうだけど あぁやって 何でもかんでも抱えようとするわけよ」 竜ちゃんが 少し目をとじたような気がした 「したら半分 持ってやらなきゃじゃん? つーか、持ってやりてぇって思っちゃったわけよっ」 兄ちゃんの言いたい事は 俺には半分しか理解できなかった だけど 伝わるものがソコにはあった 竜ちゃんは どういうふうに今のを聞いたかな 「つーわけで行ってくる!」言うのと 立ち上がるのが同時 「おい、兄ちゃん こんな小さな家で走らないで・・くだぱい」 「わりぃ!」 絶対悪いと思ってない、その顔 「嵐が去ったみたい・・・」 「だな」 竜ちゃんは少し笑ってから 外の二人の様子を見た ・・・明らかに気にしてる 「ねぇ、竜ちゃんは行くかなくて良かったの?」 「・・・」もしかしたら コレはいじわるな質問だったかもしれない 「・・・あぁ。 俺も 行こうって思ったけど 隼人の方が先だったから 俺が行こうと思ったのははアイツのためとかじゃなくて隼人に負けたくないから、とかそんな理由だし。 山口は、それに平等に感謝するだろ?」 だから行かなかった いや、行けなかったのか そこまでさ、多分誰も考えないだろ? でも竜ちゃんのそういう言葉がすごく懐かしく感じられた 昔は3人で遊ぶ事が多かった ゲームとかいっつも順番 譲ってた あと、ウチにあるゲームとか漫画とか・・・兄ちゃんが借りっぱなしのそれに竜ちゃんは「返せ」とは言わないようで そういう何かへの執着みたいなもののないトコロに少し寂しくなるコトがある 「なぁ竜ちゃん、気つかってないよね?」 「誰に?」 「兄ちゃんに」 何かを守るために 簡単に自分を犠牲にできる人 「もし、竜ちゃんが兄ちゃんのために手抜くっていうか、諦めたりしたら絶対許さないよ?」 すこし驚いた顔をしていたのは、もしかして図星をついたからか 俺がこんな事を言うのが珍しいと思ったのかはわからないけど、 「それはない」 良かった。顔を上げて言ってくれたから安心した 「・・・自分を犠牲にしたつもりで得られるものなんか何もないって教えてくれたヤツがいるから」 少し恥ずかしそうに言う あぁ、なるほどね 「あと、まぁ? うちらの仲はそんなもんじゃ崩れねぇってわかったんだろ?」 ・・・兄ちゃん 思ったよりも早かったな 「仲とりもってくれたのコイツだしv」え、のろけ? 「聞いてたのか?」 「いや、大体わかる」にやり と笑って竜ちゃんを見た ・・・もしかして兄ちゃんも 自分のために諦めようとしていないかどうかを気にしてたのかもしれない 「ん?なんの話だ?」この人が山口久美子・・・ 「どーぞ。めちゃくちゃ汚い家ですけどぉ」よく言うよ、昨日必死に片付けてたくせに 「いらっしゃい。兄のためにわざわざスイマセン」 「お邪魔します!君が拓?噂には聞いてるよvよろしくね!」 それは真っ直ぐにこっちを見る人だった 「で、なんの話だ?友情の話?」よっこらせ、と荷物を置いた 『友情』なんて言葉をこうもあっさりと言う人 しかも とっても嬉しそうに 「違いますよ、先生。恋の話です」ごめん、ちょっとふざけてみました !! この二人に同時に睨まれれば流石に怖い、けど 「何ぃ?青春だなぁ!!」 「みたいですね」悪いけど タケちゃんと俺にはそれは効かない 「なんだ?おい、もっと詳しく話してみろ!」 ・・・先生、面談はいいんですか?小さなつっこみを心の中だけでいれる でも、このきらきらした笑顔には・・・自分も弱い・・かも 「おい、どーなんだって聞いてるだろ? なんだ?お前らどんな人にホの字なんだよ〜? 私の知ってる人か?あ、もしかして桃女の子?!」 先生は意地でも 聞きたいらしい だけどそれはあくまでも担任の教師として気になる、というモノ 悲しいのはそこに興味はあっても、だからどうという気持ちがない事 「あ〜もうっ!うるせぇ!」やっぱりね 先に観念したのは兄ちゃんの方 勢いで言う 「俺の好きなヤツは、 すっげぇ鈍くて・・なんか最強なんだけど、 どうしても守ってやりたいと思う人!わるいかよっ!」 「へぇ・・・。 大丈夫だ。 お前ならきっとその人の事守ってやれるよ」 あまりにも先生が真剣にそう言い返したから驚いた ・・・本当に鈍感なんだなぁ でも心から「お前なら大丈夫」と言ってくれているがわかる 「・・・まぁな」 真っ直ぐに先生を見ながら言う その顔は初めて見たような気がした 目はマジでだけど優しくて ・・・兄ちゃんの初めて見せる大人の顔かもしれない そんな馬鹿なコトを考えてしまった 「で、小田切は?」 さぁ 竜ちゃんはなんて言う? 「はぁ。」それは諦めのため息?それとも覚悟の? 落ち着いてゆっくりと言う 「俺は・・俺の好きな人は、 人の話を聞きもしない。勝手に突っ走しる。で、色気もない。 だけど、 それでもずっと傍にいて欲しい…ヤツ」おぉ、あの竜ちゃんが照れてるよ 「そっか。 小田切っ!よかったな! お前も 一人でいるのが当たり前って言ってたお前にも・・そんな人が出来て!」 嬉しそうに 本当に嬉しそうにそう言った だからあなたの事だってば 本当に気づいてないの? でも目に・・涙?どうやら感動してるらしい 「あぁ」少しだけ頷いて それから ちょっと笑ってやっぱり先生を見た なんだろう?いつものバリアーが感じられない ・・・兄ちゃんとは逆に こんな無邪気に子供みたいに微笑むっていうか・・そんな竜ちゃんを初めて見た気がした。 二人の、そんな様子見てたら なんか・・・わかってしまった あぁ、この二人本当の本当にマジだ 俺様なあの兄ちゃんが誰かのために、なんて考えるなんて 一人で全部を背負うあの竜ちゃんが誰かと寄り添いたいと思うなんて だけど 彼女はきっと一筋縄じゃいかないと二人はとっくに知っているらしい それに 「だけど、二人ともすっごい強力なライバルがいるらしいじゃん?」そう、目の前に こんな大問題もあるんだよね 「まぁな」 「最悪だな」 二人がガンを飛ばしあったから ヤバイ・・・!!と思ったら 「「でも 勝負する相手はソイツじゃないから」」 同時に言って先生を少しの間睨んでから 二人で小さく笑った 俺は、この小さいアパートのこの小さな部屋に響いたこの声を 多分一生忘れないと思う そこに込められてる意味とか感情を完全に理解する事は 自分にはきっと無理なんだろうけど 恥ずかしいながら 感じたよ? 愛と・・・友情を なんて。こんな事言ったら二人はきっとイイ顔をしないから内緒だけど 先生はただ「ん?」と首はかしげてた 大丈夫ですよ 意味が分かるのも時間の問題だから これから どうなんのかなぁ 負けを恐れない竜ちゃんと勝つ事しか見えない兄ちゃん 火蓋はもう落とされてる ・・・・・喧嘩は上等 なんてね end ■ ミチ サマ よりコメント ■ ・・・とにかくすいません。 実はコレ二つの話を無理にくっつけたものなんです。 しかも初めは拓じゃなくてタケでいこうかと思ってました。 だけどタケならもっと状況わかっていそうなんでこんな事は言わないだろうなぁ、みたいな。 弟大好きです!一人称とかしゃべり方とか全然わからないままだったのですが大丈夫かな・・・; 二人の似てるとこと似ていないとこをとにかく平等に書いてみたかったらこうなりました。 それぞれヤンクミに惚れているポイント(?)とか想い方は違うんだろうと思って。 だけど、やっぱり難しいですね;改めて皆さん尊敬です! こんな駄文ですが、もしここまで読んでいただいた方!!本当に本当にありがとうございました! 05/06/21 お戻りはブラウザバックで; |